1.夢の中の過去

ウルダハのとある貴族の家。
 エオルゼア時間は深夜、立派な玄関の前で30代くらいの男性が座り込みメイドが心配そうに男性に寄り添っていた。
「旦那様、飲み過ぎです」
 メイドは家の主の男性ーーーアキト・サグラギに水を差し出そうとしたが、パシリッとメイドの手をはたき、不機嫌そうに声を上げる。
「ええい、黙れ!仕事で疲れているんだ!飲むぐらい構わないだろ!」
 荒れるアキトをメイドと執事が呆れながらヒソヒソ話をしている。
 「アキト様、アーシャ様が亡くなってからすっかり人が変わってしまわれた」
 「前はそんな事無かったのに…」
 その中、屋敷の階段の踊り場から二人の男女がその様子を見ていた
「…」
「アヤトお兄様?どうなされました?」
「アヤメ、アキトお父様がまた荒れているみたいだ、近付かない方が…」
 様子を見ていた顔がそっくりの双子の兄妹。アヤトとアヤメが居た。
 貴族風の服を着ているが、アヤトの顔にはいくつかの絆創膏が貼られていた。殴られたような跡も数カ所ある。
 二人ははその場から立ち去ろうとしたが…
「…ッなんだその目は…俺に不満でもあるのか…?」
 アキトは、アヤトの目線に気付き、ぎろりと睨む。
アヤト「…!」
 睨まれたアヤトは、ビクッと身体を振るわせる。
 普段父親のアキトから暴力を振るまわれていて、アヤトは父親のアキトに恐怖心を覚えている。アヤト自身、何故暴力を振るまわれているのかも分からない。
ーあなた
「…え…?」
 ふわりとアヤトから女性の透き通る声が聞こえて来る。
 どこか懐かしい女性の声だった。
ーふふ、あなた、また飲み過ぎたのね
 アヤトに
「……ッアーシャ…?」

 ふらっとアキトは立ち上がり、アヤトの腕を強く掴む。
「同じ顔しやがって…むしゃくしゃする、こっちに来い!」
「わ!?」
「お兄様!」
 心配するアヤメの声を聞かず、アキトはぐいぐいアヤトの腕を引っ張り、長い廊下の奥へ無理矢理連れて行く。アヤトは困惑するしか出来なかった。
「お父様…?」

 長い廊下奥にある大きな扉、そこはアキトの自室だった。
 ドアを勢い良く開け、近くにあるダブルベットにアヤトを突き倒す。
ドンッ
「わあっ!」
「...」
ー子供達を守って…
 またアキトの頭の中に、切なげな女性の声が聞こえ、アヤトとうっすらと女性のビジョンが重なり合う。
 女性の正体はアヤトとアヤメの母親、アーシャだった。
 アキトとアーシャは仲の良い夫婦で、双子の兄妹も可愛がっていたがいつの間にかにアキトと自分の子供との仲は段々と悪くなって行った。
 アーシャが亡くなったのは、アーシャが魔物に襲われていたアヤトを庇って亡くなったのである。
 アキトはアヤトのせいで最愛の妻が亡くなったなが許せなかったが、亡くなる時に先程の言葉を残し亡くなったのとアーシャに似て居るのでこれ以上のことが出来ないでいたが…
 酔っているせいか、理性を無くしつついるアキトはくい、とアヤトの顎を上げる。
「え…?」
「くそっ」
ーアーシャと似ているのが気に入らない…
 頭の中で妻のアーシャの言葉と自分のアヤトへの怒りが絡まり、アキトはイラつきを感じる。
 だがアキトはそのままアヤトの首筋に顔を近づけ…
「お父様、何を!?」
ペロリ…
 アキトはアヤトの首筋をゆっくり舐める。
「ひ!?」
ちゅ…ペロ、ちゅ…
 ゾクリ、とアヤトは身体をビクつかせるが、アキトは音を立てながらアヤトの首筋にキスと舐める行為を続ける。
 「や…だ…」
 アヤトは身体を振るわせるだけで強く抵抗出来ないでいた。
 こんな行為は初めてであり、父親に反抗出来ないでもあるに加え、親子、男同士でこんな事をしていて混乱しているからだ。
「ふん、お前などとっくに売り飛ばして居るがーーアーシャの残した言葉と、同じ顔である事を救いに思え」
 ギシッとベッドの音を立てアヤトと向き合うアキト。体の下半身がアヤトと絡みつく。
 そしてアヤトは涙目になっていた。
「お父様、こんな事…辞めーーーー」
 絡みつきながら、腰を動かしていたアアキトはそのままアヤトの股関あたりに手を伸ばし、アヤトの膨らんでいるあたりをズボンの上から手で撫で回す。
「ひゃ!?な!?そ、そんな所…触っ…!!」
 今までにない感覚にビクッと体を振るわるアヤト。
 そしてアキトの唇がアヤトの唇が互いに重なり合う瞬間まで近づいて行きーーーー
「ひ!?…何、を!辞め…!!」
ー…トさん!!アヤトさん!!
 青年のような声がアヤトの頭に響く
「ん…」
 暖炉で暖まられた空間。アヤトは木製のバーのような内装の店の中に居て、カウンターうたた寝をしていた。
 アヤトは目を覚ますと黒髪のミコッテ族の青年が顔を覗き込んでいた。
「アヤトさん、起きて下さい!」
 身体をゆする青年。
「…今のは…夢…?…どんな夢だったか…?ん?ここは…?」
 先程の父親、アキトとのやりとりは全て過去の夢だった。だが、アヤトーー双子の兄妹は何者かに過去の記憶を消されていて何も覚えてない。夢でも、ハッキリ思い出せないのであった。
 アヤトは身体を起こすが状況が掴めないキョロキョロ見渡し、ハッと思い出す。
「...そうか、俺、昨日拾われて…」
 昨日イシュガルド周辺のクルザス西部高地で狩をしていたが、吹雪のせいで遭難と共に空腹にも襲われていた。
 アヤトは途中で力尽き、倒れてしまったが妙な一行に助けられ、イシュガルドのとあるバーで一晩過ごしたのである。
「…大丈夫ですか?」
 ミコッテ族の青年は首を傾げ心配そうにアヤトを見つめる。
「あ、いや…すまない。大丈夫だ…えっと…お前の名前…」
 青年は嬉しそにピン、と耳と尻尾を立てる。
「自己紹介まだでしたね。ユウっていいます!このバーのスタッフなんです」
 ミコッテ族の青年、ユウはウキウキしながらアヤトに自己紹介したが、アヤトは塩対応のような態度を取る。
 元々人と話すのがあまり得意では無いからだ。
「そう言えばバーだったな…」
 昨日、ユウとバーの店員達によって助けられ、目が覚ますとバーに居たのだ。
 マスターも一風変わった男性、つまりオカマだったが話してみると優しい人物だった。
 このバーは1人のマスターと3人の男性スタッフがいる。普通のバーと大分違うとゆう説明を聞いたが、アヤトは昨日の疲れで思い出せないでいた。
「あ!そうだ、マスターがアヤトさん
に話があるって言ってたんです。下に来てくれませんか?」
「話…?」
 ぽんっと手を叩き、ユウはアヤトを連れてバーの一階へ降りて行く。
 アヤトはまだ気付いて居なかった、彼の人生が大きく変わる展開になる事に。